平成15129日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 蓮 沼 克 之

平成14(行コ)159号 法人税等更正処分等取消請求控訴事件

(原審 東京地方裁判所平成13(行ウ)127)

(口頭弁論終結日 平成141127)

判   決

東京都江東区猿江2丁目1612

控 訴 人 江東西税務署長

酒 井 啓 吾

上記指定代理人 松 下 貴 彦 

倭 文 宣 人

富 山 吉 徳

引 地 俊 二

並 松 晴 行

東京都江東区有明3丁目1番地25

被 控 訴 人 アルゼ株式会社

上記代表者代表取締役 岡 田 和 生

上記訴訟代理人弁護士 升 永 英 俊

上記訴訟復代理人弁護士 荒 井 裕 樹

主   文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。

2 事案の概要

1 被控訴人が,株式会社明立からパチスロ機のメイン基板合計66455(納品時期が平成811月から平成109月までのもの)1枚当たり14000円で購入し,これらを株式会社エレクトロコインに対し1枚当たり8万円で販売する取引をして438603万円の売買利益を得ていたにもかかわらず,米国法人Universal Distributing of Nevada, Inc.がこの取引をしていたかのように仮装し,同取引によって得た所得等を申告しなかったとして,控訴人は,平成121226日付けで,被控訴人に対し,平成841日から平成9331日まで,同年41日から平成10331日までの各事業年度の法人税並びに平成841日から平成9331日まで,同年41日から平成10331日まで,同年41日から平成11331日までの各課税期間の消費税及び地方消費税について,それぞれ更正処分及び重加算税賦課決定処分をした。

    本件は,上記取引を行っていない被控訴人に対してした上記処分は違法であるとして,被控訴人が,控訴人に対し,上記各処分のうち,下記(1),(2)の各処分の取消しを求めたのに対し,控訴人が,上記各処分は適法であるなどと主張して,被控訴人の請求を争っている事案である(以下,上記一連の取引を「本件取引」といい,また,そのうち,株式会社明立と上記米国法人との取引を「本件明立側取引」,上記米国法人と株式会社エレクトロコインとの取引を「本件ECT側取引」という。)

(1)ア 平成841日から平成9331日までの事業年度分の法人税の更正処分のうち納付すべき税額5965364600円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分

イ 平成941日から平成10331日までの事業年度分の法人税の更正処分のうち納付すべき税額971721400円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分

(2)ア 平成841日から平成9331日までの課税期間分の消費税の更正処分のうち納付すべき税額897917400円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分

 平成941日から平成10331日までの課税期間の消費税の更正処分のうち納付すべき税額1768144400円を超える部分,同課税期間の地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額444421600円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分

 平成1041日から平成11331日までの課税期間の消費税の更正処分のうち納付すべき税額2474890600円を超える部分,同課税期間の地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額620071600円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分

  本件の主たる争点は,被控訴人が本件取引を行っていたか否かの点にある。

              原審は,被控訴人が本件取引を行っていたと認めることができず上記各処分は違法であると判断し,被控訴人の請求をいずれも認容したので,控訴人が控訴の申立てをした。

2 前提となる事実,当事者双方の主張及び争点

原判決2123行目の「九沢製作所」を「株式会社九沢製作所(以下「九沢製作所」という。)」に改め,次項以下に当事者双方の当審における主張を付加するほかは,原判決の「理由」欄の「第2事案の概要」の1ないし3(原判決314行目から3918行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。

3 控訴人の当審における主張

(1) 日電協輸入条件の不存在

ア 日電協は,外資系パチスロ機製造業者の日電協加入を認めていなかったが,平成3116,日電規約第22号「国外生産業者の取扱に関する規則」を定めて,日本国以外でパチスロ機の製造を行う業者(以下「国外生産業者」という。)でも一定の要件の下で日電協に準組合員として加入することを認めた。

             外資系法人であるECJ,準組合員制度が設けられる以前の平成38月に鳥取県にパチスロ機製造工場を取得していたため,準組合員になることができず,また,正組合員の資格(国内生産業者として3年以上の生産実績等)も具備していなかったため,日電協に加入することができなかった。しかし,ECJ,出資者であるECA(外国法人)のイギリスでの生産実績を考慮されて国外生産業者とみなされ,平成51012,海外で製造輸入されたパチスロ機の販売しか行わない旨の輸入条件を課された上,準組合員として日電協に加入することが許された。

          日電協は,平成71213,準組合員制度を廃止し,外資系パチスロ機製造業者も日電協の正組合員になれるようにした。ECJは当時国内での生産実績が3年以上あったので,国内生産業者として日電協加入が認められたが,上記輸入条件は撤廃されなかった。しかし,ECJ,他の国外生産業者(アイジーティージヤパン株式会社,バークレスト株式会社等)が加入後3年で輸入条件が撤廃されたのと同様,日電脇加入から3年後の平成81012日に輸入条件が撤廃された。

イ 上記のとおり,本件取引が開始された平成811月当時,ECJないしその子会社であるECTに日電協の輸入条件は課されていなかった。現に,日電協も,本件取引の期間中,ECJに対し,輸入条件履行の有無について調査をしていない。

      なお,ECJの輸入条件は,ECJが英国のECAの工場で完成した完成品を輸入することであって,パチスロ機の一部の部品である基板をアメリカから輸入することではなかった。

(2) 被控訴人を実質的当事者とする本件取引

 ア ECT,品種,数量及び納品時期を指定して行う明立基板の注文を,本件ECT側取引の相手方であるUDNに対して行ったことはなく,この注文を,被控訴人のオフコンに入力する方法で被控訴人に対して行っていた。被控訴人小山工場の担当者は,この注文に基づき,九沢製作所に対し明立基板用部材を明立に納品するよう指示するとともに,明立に対し上記部材を使用して明立基板を製造・納品するよう指示し,明立は完成した明立基板を被控訴人小山工場に納品した。被控訴人はこれを日電協の封印会場に運び,そこでECTの従業員が日電協の職員の立会いの下,プログラムの焼き付けられたロムを明立基板に組み込み,封印した。封印基板は,再び被控訴人小山工場に搬入され,被控訴人が封印基板について電気関係の検査をした後,ECJの小山配送センター等を経て,ECTの下請会社に搬送された。

イ これに対し,UDN,明立に対し明立基板の注文をしたり,明立から明立基板の現実の引渡しを受けていないのはもちろん,ECTに対し,占有改定や指図による占有移転による明立基板の引渡しもしておらず,結局,明立基板の注文や納品に何ら関与していなかった。

ウ 被控訴人は,明立に対し明立基板の電子部品を販売するについて,仕入価格の41%という通常の取引では考えられない高額の利益を上乗せした。上記金額が明立に対する電子部品販売代金であると理解することは困難であり,明立から明立基板を購入し,これをECTに売却する転売利益が含まれていたとみるべきである。明立の上記部品代金支払時期が明立基板代金受領後とされていたこともこのことを裏付けている。

エ 上記のとおり,被控訴人は,明立基板について,明立に対する注文及び受領,ECTからめ受注及び納品を実質的に行っており,明立基板の転売利益も取得していた。

(3) 明立基板輸出入の仮装

ア 本件明立側取引及び本件ECT側取引の各売買契約書には,明立基板を輸出することやこれを輸入することが定められていたが,パチスロ機の重「要な技術情報が集約されたメイン基板の取引であるにもかかわらず,機密遵守事項の定めがなく,また,振動や静電気等に弱い電子部品の輸出入には通常保険が掛けられているところ,保険の定めがされていない。また,実際には,明立基板の輸出入は全く行われず,別の中古電子部品をダミーとして明立からUDNへ輸出し,UDNからECTがこれを輸入して,明立基板の輸出入がされているような外観を作出していた。

イ したがって,本件取引の関係者は,当初から,明立基板を真実輸出入する意思はなく,輸出入したように仮装することを合意していた。

(4) 関係者の意思

ア 明立は,被控訴人から,本件取引の勧誘を受けた。明立にとっては,代金の支払が確実にされることが一番の関心事であったところ,UDNは取引実績のない外国法人であり,代金支払の確実性に欠けていた。したがって,明立がUDNとの間で本件明立側取引をすることを決めたのは,同取引を勧誘した被控訴人が実質的な契約の相手方であると認識したからにほかならない。

イ 本件明立側取引の売買契約書は,平成8111日から効力を有するとされ,明立代表者が同年1011日付け,UDN代表者が同月20日付けで署名押印したようになっているが,UDN日本支社の来栖利和が署名を求めるため明立営業部長佐藤にあてた売買契約書の送り状の日付が同年123日となっていたように,実際は,契約の効力発生の日より後に上記署名がされており,不自然である。

ウ 本件明立側取引では,UDNの明立に対する書面による注文,明立の空輸による約定期間内出荷,明立の品質,規格等の保証,UDNのクレームは到着から14日以内に書面ですると約されていたが,実際は,被控訴人小山工場の担当者が明立に注文し,明立は明立基板を被控訴人小山工場に納品し,ダミーとなる中古パチスロ基板の輸出をするのみで,明立基板を輸出しなかったのに対し,UDNが明立にクレームを述べたことはなかった。本件ECT側取引についても,ECTの書面による注文,UDNの空輸による約定期間内出荷,UDNの品質,規格等の保証,ECTのクレームは到着から14日以内に書面でするとされていたが,実際は,ECTが被控訴人に発注し,UDNはダミーとなる中古パチスロ基板の輸出をするのみで,明立基板を輸出しなかったのに対しSECTUDNにクレームを述べたことはなかった。

       したがって,本件明立側取引及び本件ECT側取引のいずれにおいても,関係当事者は,各売買契約書の契約条項を遵守しないばかりか,そのことに異議を述べてもいなかった。

エ 上記のとおり,明立,UDN及びECT,真実本件取引をする意思を有していなかっただけではなく,被控訴人が実質的な取引の主体であることを認識していたというべきである。

(5) 本件ECJ側取引代金額の不合理性

ア UDN,明立から明立基板を1枚当たり14000円で仕入れ,これをECT1枚当たり8万円で販売していたとしているが,これは通常のメイン基板取引価格を超える高価格で販売していたことになり,このような高価格で取引する合理的な理由はない。

イ 被控訴人は,UDN代表者岡田がECJに対し行ってきたパチスロ機ソフト開発に必要な知識,技能の指導及び効率的な販売に必要な経営指導の対価を本件ECJ側取引価格に上乗せしたと主張するが,岡田はそのような開発指導や経営指導をしていない。すなわち,被控訴人社員小森富美雄がECJの研究開発員の評価を行い,テーマ内容,候補者の業務略歴及び推薦理由等を記載した社長表彰候補推薦書を作成しているとおり,ECJの開発員は被控訴人に派遣され,被控訴人の指導を受けてECJのソフト開発を行っていたものであり,岡田の指導を受けていたものではない。

ウ 仮に,岡田がECJに対し開発指導や経営指導をしたとしても,これは被控訴人代表者の立場で行ったものであり,その対価は被控訴人に帰属する。

       すなわち,被控訴人に対し忠実義務を負う岡田は,被控訴人の業務の範囲内に属する事項については,被控訴人のためにその能力を用いなければならないところ,岡田が指導したノウハウは,日本におけるパチスロ機メーカーのソフト開発や経営に必要な知識等であって,米国法人であるUDNが有していたものではなく,日本法人である被控訴人が有していたものであり,また,UDNは日本の会社に対するソフト開発,経営指導のコンサルタント業務をその業務の範囲とするものではないから,岡田のECJに対する開発指導や経営指導に対する対価は,被控訴人に帰属すべきものである。その上,岡田は,ゲーム機メーカーである被控訴人の代表取締役であるから,取締役として競業避止義務を負い,被控訴人代表取締役の立場以外で技術指導を行うには被控訴人の取締役会の承認を得る必要があるが,被控訴人の取締役会の承認手続はされていない。また,被控訴人は,本件取引終了後,ECJとの間で,製造販売許諾契約を締結し,ECJ開発ソフトを搭載したパチスロ機をライセンス生産し,その許諾料を12万円としているが,許諾料がこのように低額なのは,被控訴人がECJに技術指導を行っていたからと考えられる。さらに,UDNECJに対し開発指導や経営指導をしたとすれば,ECJにはUDNへの報酬支払について源泉徴収義務が生ずるが,ECJ耳源泉徴収を行っていない。

(6) 被控訴人の動機

ア 被控訴人が国外関連者であるUDNと直接明立基板取引を行ったとすると,移転価格税制が適用され,独立企業間価格と実際の取引価格との差額の全額が損金不算入となり,また,被控訴人が,合理的な理由もなくUDNに対する債務を免除したり金銭を贈与したとすると,国外関連者に対する寄付としてその全額が損金に算入されないこととなり,いずれの場合にも,被控訴人には税負担が生じるところ(租税措置特別措置法66条の4参照),被控訴人は,これらの税負担を回避して,43億円の利益をUDNに帰属させた。

       したがって,本件取引は,UDNの債務超過を解消するため,被控訴人が取引当事者となった場合の上記税負担を回避した上,被控訴人に帰属する本件取引の利益をUDNに移転する日的で,契約名義人を被控訴人ではなくUDNと仮装して作出したものであり,これにより,被控訴人は,上記税負担を回避してUDNの債務超過を解消した結果,UDNに対し有していた債権の回収が可能となったばかりでなく,自己の株式公開の目的も果たせることになった。

イ 仮に,被控訴人の算出の納税金額を前提としても,被控訴人が本件取引を仮装することにより免れた日本での納税総額は196729、万7139円となり,UDNを取引当事者とする場合の同杜の納税総額318986120円と本件取引の各当事者が負担した輸出入経費総額337177797円の合計額65000万円余を差し引いても,13億円余の租税を回避していることになる。

          なお,被控訴人は貸倒損失があるとして上記納税金額を算出しているが,貸倒損失とは,債権全額の回収不能という事実による貸金等の確定的な減少(消滅)をいうものであって,回収不能のおそれがあるというだけでは十分といえないから,直ちに損金の額に算入されるわけではない。実際,被控訴人はUDNに対する債権を貸倒損金に計上していなかった。

(7) まとめ

ア 以上のとおり,日電協の輸入条件がない以上,ECTUDNから明立基板を輸入する必要はなかった。また,被控訴人が,明立に対する注文及びその受領,ECTからの受注及びその納品を実質的に行っており,明立, UDN及びECT,明立基板の輸出入を仮装するなど真実本件取引をする意思を有しておらず,被控訴人が実質的な取引の主体であると認識していたのである。そして,この本件取引の仮装によって,被控訴人は移転価格税制もしくは寄付金課税による税負担を回避した上UDNの債務超過を解消した結果,UDNに対し有していた債権の回収が可能となったばかりでなく,自己の株式公開の目的も果たせることになったのである。

 したがって,本件明立側取引及び本件ECT側取引は,いずれも,明立,UDN及びECTに売買契約の内心的効果意思のない通謀虚偽の意思表示によるものであって無効であり,本件取引は,被控訴人が明立から明立基板を購入し,これをECTに販売したものというべきである。

イ 仮に,本件取引が,明立とUDN,UDNECTの各取引であったとしても,ECTUDNに対する代金には,岡田の開発指導や経営指導の対価が含まれているところ,これは本来被控訴人に帰属するものであるから,この対価を被控訴人がUDNに寄付したことになる。

ウ したがって本件各処分及び本件各重加算税賦課処分4適法である。

2 被控訴人の当審における主張

(1) 日電協輸入条件の継続

ア 日電協は,外資系企業や新規参入企業に対し厳しい態度をとっていたが,平成71213日に準組合員制度を廃止した後も,外資系企業に対する上記対応を変化させず,同日に正組合員として日電協に加入したECJに対しても,準組合員として日電協に加入した際に課した輸入条件を廃止せず,少なくとも,正組合員として加入後3年間はこの輸入条件を継続させた。そのため,ECJ及びその子会社のECT,本件取引当時,パチスロ機の製品又は部品を海外から輸入しなければならなかった。また,ECJ,準組合員として加入する前に販売した「チェリーバー」というパチスロ機の製造販売に関し日電協の反発を受けたことがあっただけではなく,人気機種を開発して業績を上げていた外資系の新規参入者であったため,業界他社の厳しい排除圧力を受けており,できるだけ,日電協との間に摩擦を生じさせないようにする必要があった。

イ したがって,ECJ及びECT,輸入条件を無視して被控訴人から明立基板を購入することができず,海外法人であるUDNと取引せざるを得なかったのである。

       なお,日電協がECJに課した輸入条件の趣旨は,輸出入コストを負担させて価格競争力を減殺させるというものであったから,ECJ,当初,ECA英国工場で製造したパチスロ機を輸入していたが,その後,オーストラリア法人であるPGLからパチスロ機を輸入することに改め,このことを全防犯連への報告文書を介して日電協にも通知し,本件取引ではパチスロ機の中枢部品である基板の輸入のみを行うこととした。

(2) 被控訴人の本件取引への関与

ア 被控訴人は,平成89月当時,被控訴人の主幹工場を栃木県所在の小山工場から鳥取県所在の鳥取工場に移管しつつあり,小山工場周辺の下請業者である明立の仕事も減少した。そこで,被控訴人は,下請業者である明立に仕事与えようと考え,明立に本件取引を斡旋した。

       岡田は,懇意にしていたスタジディスを支援する意思を有していたが,日電協の正組合員である被控訴人代表者としてスタジディス経営のECJを支援することができなかったため,UDN代表者としてECJを支援する旨の覚書を取り交わし,UDN代表者としてECJを支援していたところ,ECJの日電協輸入条件の履行に協力するため,UDNを本件取引に参加させた。

          被控訴人は,UDNに多額の貸付金債権及び売掛金債権を有していたので,その回収のためUDNを支援することとし,明立基板部品の明立への販売について,その代金を仕入価格の41%と高額にする代わり,簡単な電気検査をする等付随的な手助けをした。

          被控訴人は,被控訴人のオフコンにECJから明立基板の受注数が入力されるので,九沢製作所に当該情報を伝達した。このような情報伝達は合理的な取引方法である。

イ 上記のとおり,被控訴人は本件取引の付随的な事務に関与したことはあったが,本件取引の当事者になったことはない。

(3) 明立基板の輸出入

ア 明立基板は,実際には輸出入されず,これに代わる中古基板がダミーとして輸出入されていた。しかし,明立,UDN及びECT,中古基板の運搬費,梱包費,事務手続費,税金等を輸出入数量に応じて負担していたかち,ダミーによる輸出入によって経済的利益を得ていない。また,明立基板は,UDNに輸出された後,直ちにUDNから輸入されるものであるから,明立からUDNへの現実の引渡しは,本件取引を成立させる要件になっていない。

       したがって,ダミーによる輸出入は,たまたま,UDNを除く現場関係者が納期に間に合わせるため手続を省略したに過ぎず,明立,UDN及びECTが当初から合意していたことではない。

イ 明立基板の輸出は,1回の輸出入当たり最小3台から最大1000台であり,金額も最小42000円から最大1400万円と低額であったから,保険を掛けてはいなかった。UDNからの輸入については,包括的な保険契約が締結されており,この保険の対象となっていた。また,明立基板はソフトが搭載されていないので,特段の配慮を要するほどの機密性はなく,特段の機密保護の必要性もなかった。

ウ 上記のとおり,明立基板についてダミーによる輸出入がされたからといって,本件取引自体が仮装であることにはならない。

(4) 関係者の意思

ア 明立とUDNは本件明立側取引について,UDNECTは本件ECT側取引について,それぞれ売買契約書を作成し,各契約に基づく発注により,明立が明立基板を製作し,最終的にこれがECTに引き渡され,これに従った売買代金がUDNから明立に,ECTからUDNにそれぞれ支払われているから,各当事者に本件取引の意思があったことは明らかである。また,ECJ及びECT,日電協から輸入条件を課せられていたため,従前から取引関係のあった外国法人のUDNと本件取引をしたのであって,被控訴人とは直接取引をすることができなかった。

イ 本件明立側取引の契約書の作成が契約発効後になってしまっているとしても,そのことは一般取引社会においてよく見られることであって,不自然なことではない。

ウ 明立基板の発注は,口頭でされることもあるから,UDNから明立,ECTからUDNへの各発注書面がなかったとしても,各売買契約書の契約条項が遵守されていないとか,UDNECTからの発注がなかったことにはならない。

エ UDNがダミーによる輸出についてクレームを述べなかったのは,UDNがそのことを知らなかったからである。

オ 上記のとおり,明立,UDN及びECT,真実本件取引をする意思を有していたものである。

(5) 本件ECJ側取引代金額の合理性

ア 岡田がECJに対し行ったパチスロ機用ソフト開発指導及び経営指導は,岡田がUDNの営業活動を通して獲得したノウハウに基づき,岡田個人の創造的能力・応用力によって生み出されるものである。したがって,これらは岡田個人に属し,誰のためにこれを使用するかの決定権は岡田に帰属するところ,岡田がUDNの代表者としてこれらをUDN