平成14年4月24日判決言渡し
同日原本領収 裁判所書記官
平成13年(行ウ)第127号
法人税等更正処分等取消請求事件
口頭弁論終結日 平成14年3月13日
判 決
(原 告) (被 告)
東京都江東区有明三丁目1番地25 東京都江東区猿江2-16-12
アルゼ株式会社 江東西税務署長 今井 實
(代表者代表取締役)
岡田 和生
当事者の訴訟代理人及び指定代理人は別紙のとおり
主 文
1 被告が平成12年12月26日付けで原告に対してした,
(1 )平成8年4月1日から平成9年3月31日までの事業年度分の法人税の更正処分のうち納付すべき税額59億6536万4600円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分
(2)平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度分の法人税の更正処分のうち納付すべき税額9億7172万1400円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分
をいずれも取り消す。
2 被告が平成12年12月26日付けで原告に対してした,
(1)平成8年4月1日から平成9年3月31日までの課税期間分の消費税の更正処分のうち納付すべき税額8億9791万7400円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分
(2)平成9年4月1日から平成10年3月31日までの課税期間の消費税の更正処分のうち納付すべき税額17億6814万4400円を超える部分,同課税期間の地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額4億4442万1600円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分
(3)平成10年4月1日から平成11年3月31日までの課税期間の消費税の更正処分のうち納付すべき税額24億7489万0600円を超える部分,同課税期間の地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額6億2007万1600円を超える部分及びその重加算税賦課決定処分
をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
理 由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告の請求
主文同旨
2 被告の答弁
(1)本案前の答弁
本件訴え中,平成8年4月1日から平成9年3月31日までの課税期間の消費税の更正処分及びその重加算税の賦課決定処分,平成9年4月1日から平成10年3月31日まで及び平成10年4月1日から平成11年3月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の更正処分並びに重加算税の賦課決定処分の取消しを求める部分を却下する。
(2)本案の答弁
原告の請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
本件は,被告が,原告は,株式会社明立からパチスロ機のメイン基板合計6万6455枚(納品時期が平成8年11月から平成10年9月までの間のもの)を1枚当たり1万4000円で購入して,株式会社エレクトロコインに対してこれを1枚当たり8万円で販売する取引を行って所得を得ていたにもかかわらず,米国法人Universal Distributing of Nevada, Inc.がこれを行っていたかのように仮装し,同取引によって得た所得等を申告していなかったとして,原告に対し,法人税,消費税及び地方消費税の更正処分並ぴにそれらの重加算税賦課決定処分を行ったところ,原告が,上記の取引を行っていた者は,原告ではなく,上記の米国法人であると主張して,被告に対し,上記各処分の取消しを求めた事案である。
(以下,上記の一連の取引を「本件取引」といい,また,そのうちの,株式会社明立からの購入を「本件明立側取引」,株式会社エレクトロコインヘの販売を「本件ECT側取引」という。)
1 前提となる事実(以下の事実は,各項末尾に掲げた証拠等により認定した。)
(1) 課税経緯
ア 原告に対する,平成8年4月1日から平成9年3月31日までの事業年度(以下「平成9年3月期」という。),平成9年4月1日から平成10年3月31日までの事業年度(以下「平成10年3月期」という。)及び平成10年4月1日から平成11年3月31日までの事業年度(以下「平成11年3月期」という。)の各法人税及び重加算税並びに平成8年4月1日から平成9年3月31日までの課税期間(以下「平成9年3月課税期間」という。),平成9年4月1日から平成10年3月3旧までの課税期間(以下「平成10年3月課税期間」という。),平成10年4月1日から平成11年3月31日までの課税期間(以下『平成11年3月課税期間』という。)の各消費税,地方消費税及び重加算税の課税経緯は,下記イ記載の点を除くほか,別表1ないし6記載のとおりである。
(争いのない事実)
イ 被告は,平成14年3月29日,平成11年3月期の法人税について,所得金額を595億1968万7893円,納付すべき法人税額を205億3429万2015円とする更正処分及び1億1721万6000円の過少申告加算税を賦課する旨の過少申告加算税賦課決定を行った。
(当裁判所に顕著な事実)
なお,以下,次のとおり略称する。
<1>平成9年3月期及び平成10年3月期を併せて「本件各事業年度」という。
<2>本件各事業年度の法人税の平成12年12月26日付け各更正処分を併せて「本件法人税各更正処分」という。
<3>本件各事業年度の法人税に関する重加算税の平成12年12月26日付け各賦課決定処分を併せて「本件法人税各決定処分」という。
<4>平成9年3月課税期間,平成10年3月課税期間,平成11年3月課税期間を併せて「本件各課税期間」という。
<5>本件各課税期間の消費税及び地方消費税の平成12年12月26日付け各更正処分を併せて「本件消費税各更正処分」という。
<6>本件各課税期間の消費税及び地方消費税に関する重加算税の平成12年12月26日付け各賦課決定処分を併せて「本件消費税各決定処分」という。
<7>本件法人税各更正処分及び本件消費税各更正処分を併せて「本件各処分」といい,本件法入税各決定処分及び本件消費税各決定処分を併せて「本件各重加算税賦課処分」という。
(2) 原告による不服申立て
ア 原告は,平成13年2月23日,国税不服審判所長に対し,本件法人税各更正処分及び本件法人税各決定処分並びに平成12年12月26日付けで行なわれた平成11年3月期の法人税更正処分及び重加算税賦課決定処分について,審査請求した。
なお,本件法人税各更正処分及び本件法人税各決定処分は,法人税法に規定する青色申告書に係る処分である。
(争いのない事実)
イ 原告は,平成13年2月23日,東京国税局長に対し,本件消費税各更正処分及び本件消費税各決定処分についての異議申立書を提出し,同年4月27日,上記異議申立書を国税不服審判所長に対する審査請求として取り扱うことに同意し,国税通則法89条1項により,国税不服審判所長に対して審査請求がされたものとみなされた。
(争いのない事実)
ウ 原告は,平成13年6月7日,本件各処分及び本件各重加算税賦課処分並びに平成12年12月26日付けで行なわれた平成11年3月期法入税更正処分及び重加算税賦課決定処分について,本件訴えを提起した。
(争いのない事実)
エ 当裁判所は,平成14年4月15日,本件訴えから,平成12年12月26日付けで行なわれた平成11年3月期の法人税更正処分及び重加算税付加決定処分の取消しを求める訴えを分離した。
(当裁判所に顕著な事実)
(3)本件の取引関係者等
ア 原告
原告は,昭和44年に岡田和生によって設立されたユニバーサルリース株式会社をその前身とするユニバーサルテクノス株式会社が,平成10年4月に,ユニバーサル販売株式会社を吸収合併した上,商号を現在のアルゼ株式会社に変更して成立した会社であり,遊戯機器及び遊技機器の試験研究,企画,開発,製造,販売及び輸出入等を目的とする株式会社である(以下においては,原告の前身である上記ユニバーサル販売株式会社を含めて「原告」という。)。
(甲7,8,乙12,13)
なお,原告は,岡田和生及びその親族等のグループ会社が筆頭株主である同族会社であり,本件取引の全期間を通じて,岡田和生は,原告の代表者として原告の経営に従事し,岡田和生及びその親族等のグループは,原告の8割程度の株式を保有していた。
(争いがない事実)
イ Universal Distributing of Nevada,Inc. (UDN)
米国法人Universal Distributing of Nevada,Inc.(以下「UDN」という。)は,スロットマシーンの製造販売を業とする米国法人である。本件取引の全期間を通じて,岡田和生が,UDNの全株式を保有し,代表者としてUDNの経営に従事していた。
(争いのない事実)
UDNは,同社が100パーセント出資した子会社UDNジャパンをUDN日本支社として位置付けて,UDNジャパンを通じて日本国内での活動を行っていたほか,UDN代表取締役岡田和生も日本に在住し,日本国内でUDN代表取締役として活動していた。(原告代表者)なお,UDNは,本件取引開始前の時点において,債務超過状態にあった。
(争いのない事実)
ウ パシフィック・ゲーミング・リミテッド(PGL)
パシフィック・ゲーミング・リミテッド(以下「PGL」という。)は,オーストラリアの法人であり,UDNの100パーセント子会社である。
(原告代表者)
エ エレクトロコインジャパン株式会社(ECJ)
エレクトロコインジャパン株式会社(以下「ECJ」という。)は,イギリスにおいてエレクトロ・コイン・オートマティック社(Electro Coin Automatic.以下「ECA」という。)を所有,経営していたジョン・スタジィデス(以下「スタジディス」という。)によって平成3年8月に設立された会社であり,室内電子遊戯器,遊戯機器の開発,製造,販売及び輸出入等を業としている。
本件取引の全期間を通じて,スタジディスは,ECJの代表者として経営に従事していた。
なお,スタジディスは,従前,ECJの全株式を保有していたが,オーストラリア法人のELECTROCOIN HOLDING PTY LTD(以下「ECH」という。)が本件取引開始前の平成8年3月末までに,ECJの全株式を取得し,岡田和生の長男である岡田知裕は,平成7年12月22日から平成9年8月6日までの間,ECHの共同代表の一人として役員に就任していた。また,原告は,ECJに対し,平成8年3月末で8億円,平成9年3月末で5億9000万円の貸付金を有していた。なお,原告は,平成11年2月にECJの全株式を取得し,平成12年4月1日付けでECJを吸収合併している。
(争いのない事実)
オ 株式会社エレクトロコイン(ECT)
株式会社エレクトロコイン(以下「ECT」という。)は,ECJからパチスロ機の組み立て加工を受託している会社であり,その売上のほとんどがECJに対するもので,平成9年3月当時,ECTの役員はECJ役員を兼務しているものが就任しており,ECJがECTの事務代行を行っていた。
(甲58)
このように,ECTは,本件取引の全期間を通じて,実質的にはECJの製造部門と位置付けられていた会社であり,ECJは,ECTの全株式を保有していた。
(争いのない事実)
カ 株式会社明立
株式会社明立(以下「明立」という。)は,本件取引の目的物であるメイン基板(以下「明立基板」という。)を製作していた会社である。
(争いのない事実)
キ 日本電動式遊技機工業協同組合日本電動式遊技機工業協同組合(以下「日電協」という。)は,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という。)の規制を受けるパチスロ機製造業者によって構成される団体であり,風営法の規制に基づいて,不正防止を目的に,ROMの一括購入,ROMへの検定済みプログラムの書き込み,ROM及び基板ケースの封印等の業務を行っている。
(乙33)
ク 日本電動式遊技機特許株式会社
日本電動式遊技機特許株式会社(以下「日電特許」という。)は,パチスロ機製造業者数社から,パチスロ機についての関係特許等の工業所有権を,サブライセンス権(再実施許諾権)付きでライセンス(実施許諾)を受け,さらに,これを一定のパチスロ機製造業者に対して再許諾を実施している会社である。
(甲14)
2 当事者双方の主張
(被告の主張)
(1)本案前の主張
原告は,前記のとおり,平成13年4月27日付けで,東京国税局長に提出された本件消費税各更正処分及び本件消費税各決定処分に係る異議申立書を審査請求として取り扱うことに同意したので,同日,上記各処分について審査請求したものとみなされる。
そうすると,本件消費税各更正処分及び本件消費税各決定処分の取消しを求める訴えは,審査請求についての裁決を経ずに,かつ,審査請求がされた日の翌日から起算して3か月を経過する前に提起された訴えであるから,不適法なものとして却下されるべきである。
(2)本件法人税各更正処分の根拠及び適法性について
本件各事業年度の所得金額及び納付すべき法人税額は,別表7及び8のとおりであり,これは,本件法人税各更正処分における所得の金額及び納付すべき法人税額と同額であるから,本件法人税各更正処分は適法である。
別表7及び8の各項目の内訳は次のとおりである。
ア 平成9年3月期(別表7)
a 本件更正処分前の所得金額 145億8256万3931円
上記金額は,被告が平成10年11月25日付けでした原告の平成9年3月期の法人税の更正処分における所得金額である。
b 売買利益計上漏れ 13億1920万8000円
上記金額は,当期において原告が本件取引によって得た売買利益の金額であり,当期の利益として益金の額に算入し所得金額に加算したものである。
すなわち,明立基板1枚当たりの仕入金額は1万4000円であり,明立基板1枚当たりの販売金額8万円が明立基板1枚当たりの売上金額となるから,これに当期の明立基板の販売枚数を乗じて得た金額の差益が当期の売買利益計上漏れの額であり,その具体的数値は,別表9の平成9年3月期欄記載のとおりである。
c 寄附金の損金不算入額 6億2700万円
UDNは,前提事実記載の株主構成によれば,原告にとって租税特別措置法施行令39条の12第1項2号に規定する関係にあり,したがって租税特別措置法(以下「措置法」という。)66条の4第1項に規定する国外関連者に該当するところ,上記金額は,原告からUDNに対する寄附金であり,措置法66条の4第3項に規定する国外関連法人に対する寄附金と認められることから,法人税法37条及び措置法66条の4第3項の規定に基づき寄附金の損金算入限度額を再計算した結果,新たに発生した寄附金の損金不算入額として所得金額に加算したものである。
すなわち,原告は,本件取引により,明立基板の売上対価をECTからUDNに送金させ,さらに仕入対価をUDNから明立に送金させており,その結果,UDNに売買利益を供与したものである。そうすると,原告のUDNに対する寄附金の額は,ECTからUDNに送金された日に寄附金が支出されたものとして算出すべきであり,その結果は,別表10の平成9年3月期欄記載のとおりである。
d 受取配当等の益金不算入額の過大額 9188円
上記金額は,確定申告における受取配当等の益金不算入額の計算に当たり,所得金額に加算した有価証券317万9112円が前期末現在の特定株式等以外の株式及び出資等の帳簿価額の計算に含められていなかったため,法人税法23条の規定に基づき再計算した正当額との差額を減算過大額として所得金額に加算したものである。
e 寄附金として損金の額に算入される額 6億2700万円
上記金額は,上記cのとおり,原告が当期中にUDNに対して利益供与した6億2700万円は,同社への寄附金と認められることから,損金の額に算入し所得金額から減算したものである。
f 所得金額 159億0178万1119円
上記金額は,前記aの金額にb,c及びdの金額を加算し,eの金額を減算した金額である。
g 法人税額 59億6316万7875円
上記金額は,前記fの所得金額(国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)に法人税法66条(平成10年法律1第24号による改正前のもの。以下,平成10年3月期について同じ。)に定める税率を乗じて計算した金額である。
h 課税留保金額 21億8132万7000円
上記金額は,次の(a)の金額から(b)の金額を控除した金額(ただし,国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
(a)留保金額 78億1759万0495円
上記金額は,平成10年11月25日付け更正処分における留保所得金額143億1673万6875円に,前記bのうち新たに留保金額となる6億9220万8000円を加算した金額150億894万4875円から,次のI及び Uの金額を控除した金額である。
I 前記gの金額から後記kの金額を控除した金額
59億5697万8630円
U 前記gの金額に20.7パーセントを乗じた金額
12億3437万5750円
(b)留保控除額 56億3626万3307円
上記金額は,法人税法67条3項に規定する留保控除額である。
i 課税留保金額に対する税額 4億2976万5400円
上記金額は,前記hの課税留保金額に法人税法67条に規定する税率を乗じて計算した金額である。
j 法人税額の計 63億9293万3275円
上記金額は,前記gの法人税額59億6316万7875円に前記iの課税留保金額に対する税額4億2976万5400円を加算した金額である。
k 控除所得税額 618万9245円
上記金額は,法人税法68条に規定する法人税額から控除される所得税の額である。
l 差引法人税額 63億8674万4000円
上記金額は,前記jの金額から前記kの金額を差し引いた金額(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
m 本件更正処分前の法人税額 59億6536万1600円
上記金額は,被告が平成10年11月25日付けでした原告の平成9年3月期の法人税の更正処分における法人税額である。
n 納付すべき法入税額 4億2138万2400円
上記金額は,前記1の金額から前記mの金額を差し引いた金額である。
イ 平成10年3月期(別表8)
a 本件更正処分前の所得金額 26億0499万1488